人間はそれぞれいくつもの関係を持っている。
言い換えれば、いくつもの物語を曳きずって歩いているといってもいい。

コンクリート塀の中で一囚人であった主人公甚佐と女子収容区の看守部長順子は知り合い、二人は結婚する。精神的結合をのぞむ聖女のような順子と情欲的な動きをする甚佐。やがて順子は癌に侵され、同じ教会に属する医者が経営する大病院に入院するが、ぞんざいな扱いを受けてしまう。甚佐は最後の望みとして丸山ワクチンを打たせようと、なりふり構わず奔走する。その聖女との出会いと別れを描いた感動の長編三部作
『地宴』、『海潮音』、『生命付盡きる日』（平林たい子文学賞受賞作）。その他、八匠衆一の特異な私小説世界を展示紹介します。